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小さな会社にも、企業理念って本当に必要?製造業がBtoCに挑戦する時に大切にしたいこと

「うちみたいな小さな会社に、企業理念なんて必要なんでしょうか?」

先日、ある製造業の社長さんからこんな質問をいただきました。お話を伺うと、長年OEMで堅実に事業を続けてこられた中で、自社製品を直接お客さまに届けたいという想いが芽生えてきたとのこと。技術力には自信がある。でも、それをどう言葉にして伝えればいいのか分からない。そんなモヤモヤを抱えていらっしゃいました。

実はこのモヤモヤ、企業理念と深く関わっているんです。理念というと大企業の立派な言葉を想像されるかもしれませんが、本当は自分たちが大切にしている想いを言葉に整えることなんですね。特に製造業がBtoCに挑戦する時、この「想いの言語化」が道しるべになります。

この記事では、小さな会社だからこそできる企業理念の作り方や、無理なく社内に浸透させる工夫、そして実際にBtoCに成功した製造業の実例まで、一緒に見ていきましょう。一人でも始められる小さな一歩から、あなたらしい理念づくりを考えてみませんか。

目次

「良いものは作れるのに、どう伝えればいいかわからない」というモヤモヤの正体

OEMで培った確かな技術があるのに、それを消費者に届ける言葉が見つからない。こんな悩みを抱えていませんか。実はこのモヤモヤ、企業理念と深く関わっているんです。多くの製造業の経営者が同じ壁にぶつかっています。一緒に、この正体を見ていきましょう。

技術力には自信がある、でも言葉が見つからない

職人気質で真面目に良いものを作り続けてきたからこそ、「自分たちの良さ」を言葉にすることに慣れていないんですね。技術仕様は語れるけれど、想いやこだわりを消費者に伝える言葉が出てこない。

BtoBの取引先は技術を評価してくれました。でも、BtoCでは「なぜこの会社から買うのか」という理由が必要になります。その理由を言葉にする力こそが、実は企業理念なんです。

企業理念は大企業のものと思っていませんか

「理念」と聞くと、立派な額縁に入った言葉を思い浮かべてしまいますよね。自分たちには関係ない、そう感じる方も多いかもしれません。

でも実は、小さな会社こそ自分たちらしさを言葉にして伝えることが大切なんです。大企業は知名度やブランド力で選ばれますが、小さな会社は想いや価値観で差別化できます。お客さまは、製品のスペックだけでなく、作り手の姿勢に共感して選んでくださるんですね。

BtoCへの挑戦で必要になる「自分たちらしさ」を言葉にする力

BtoBでは取引先が技術を評価してくれていました。品質データや実績が、信頼の証だったんですね。でもBtoCでは、消費者に「なぜこの会社から買うのか」を伝える必要があります。

自分たちらしさを言葉にする力が、BtoC成功の土台になるんです。それは難しいことではなく、これまで大切にしてきた想いを、お客さまに届く形に整えることなんですね。

企業理念とは何か、なぜ今あなたの会社に必要なのか

企業理念って、難しい言葉に聞こえるかもしれません。でも実は、毎日ものづくりに向き合う中で大切にしている想いや、お客さまに届けたい価値を言葉に整えたもの。それが企業理念なんです。

特にOEMからBtoCへの転換期にある製造業にとって、理念は判断の軸になってくれます。新しい挑戦には迷いや不安がつきもの。そんな時、「自分たちは何のためにこれをやるのか」を確認できる言葉があると、社員と想いを共有する道具にもなるんですね。

企業理念は「想い」を「言葉」に整えたもの

完璧な正解を探す必要はありません。企業理念とは、あなたが日々のものづくりで大切にしている想いを、自分たちらしい言葉で表現したものです。

技術へのこだわり、品質への誠実さ、お客さまに喜んでもらいたいという願い。そうした想いは既にあなたの中にあるはずです。それを言葉に整理していくプロセスが、理念づくりなんですね。「こうあるべき」という型にはめる必要はなく、自分たちの言葉で語ることが大切です。

社会に対してどんな価値を提供したいのか。お客さまにどんな喜びを届けたいのか。そんな問いに向き合いながら、少しずつ言葉を見つけていけば大丈夫です。

ミッション・ビジョン・バリューって、難しく考えなくて大丈夫

横文字を聞くと構えてしまうかもしれませんが、実はシンプルなことなんです。ミッションは「何のために」事業をしているのか。ビジョンは「どんな未来を」実現したいのか。バリューは「何を大切にして」行動するのか。それだけのことです。

製造業の文脈に置き換えてみましょう。例えば、ミッションは「私たちの技術で、人々の生活を豊かにする」。ビジョンは「10年後、この技術が当たり前になっている世界」。バリューは「一つひとつの製品に、誠実さを込める」。こんなふうに、自分たちの言葉で表現すればいいんです。

難しい経営用語として捉えるのではなく、自分たちの想いを整理する道具として活用してみてください。

次の図は、ミッション・ビジョン・バリューの関係性を分かりやすく示したものです。

ミッション・ビジョン・バリューの関係性
企業理念
Mission
何のために
Vision
どんな未来を
Value
何を大切に
3つの要素が相互に作用し、企業理念を形づくります

OEMからBtoCへ、転換期だからこそ理念が支えになる

新しい挑戦には、迷いがつきものです。自社製品の開発、デザインの方向性、価格設定、販売チャネル。判断すべきことが次々と出てきます。

そんな時、企業理念があると「自分たちらしい選択」ができるようになります。例えば製品デザインを決める場面で、「私たちは誠実さを大切にする」という理念があれば、派手さより品質の確かさが伝わるデザインを選ぶ。そんな判断の軸になってくれるんです。

また、社員の方々と想いを共有する道具にもなります。OEMでは取引先との信頼関係が中心でしたが、BtoCでは社員一人ひとりがブランドの顔になります。理念を共有することで、全員が同じ方向を向いて挑戦できる。それが、小さな会社の強みにもなるんですね。

経営理念との違いを知っておこう

企業理念と経営理念、似た言葉ですが少し違いがあります。一般的に、経営理念は会社全体の経営方針や考え方を示すもの。企業理念はもう少し広く、社会との関わりや存在意義を含む概念として使われることが多いんです。

ただ、小さな会社では厳密に分ける必要はありません。創業者の想いや、会社が大切にする価値観を表す言葉として、どちらの言葉を使っても構わないでしょう。大切なのは、形式ではなく中身です。

自分たちが何のために事業をしているのか。どんな価値を社会に提供したいのか。その想いを言葉に整えることが、理念づくりの本質なんですね。言葉の定義にとらわれすぎず、自分たちらしい表現を見つけていきましょう。

一人でも始められる、企業理念の作り方

「理念を作る」と聞くと、何か大がかりな準備が必要な気がしてしまいませんか。コンサルタントを呼んで、社員全員でワークショップをして…そんなイメージを持たれている方も多いかもしれません。

でも実は、経営者のあなたが一人で、今日からでも始められるんです。まずは自分の想いを言葉にするところから。完璧な理念を目指すのではなく、育てていく姿勢で。そして、社員との対話の中で少しずつ磨いていく。製造業ならではの強みも、温かい言葉に変えていけます。

ここでは、大企業のような仕組みがなくても取り組める、あなたらしい理念づくりの方法を一緒に考えていきましょう。

まずは自分の想いを書き出すところから

理念づくりの第一歩は、あなた自身の想いを棚卸しすることから始まります。

「なぜこの仕事を続けているのか」「お客さまに何を届けたいのか」「10年後、どんな会社でありたいか」。こうした問いに、ノートに向かって答えを書き出してみてください。完璧な文章でなくて大丈夫です。キーワードやフレーズでも構いません。

形式にこだわらず、思いつくまま書いてみる。するとモヤモヤしていた想いが、少しずつ整理されていくんです。「お客さまの暮らしを豊かにしたい」「職人の技術を次世代に残したい」。そんな言葉が出てきたら、それがあなたの理念の種になります。毎日少しずつでいいので、自分との対話を続けてみませんか。

あなたの
想い
Mission
ミッション

存在意義や使命を
言葉にしたもの

なぜこの仕事を
続けているのか

Vision
ビジョン

目指す未来像を
描いたもの

10年後、どんな
会社でありたいか

Value
バリュー

届けたい価値を
明確にしたもの

お客さまに何を
届けたいのか

社員と対話しながら言葉を紡いでいく方法

経営者一人で完成させる必要はありません。むしろ、社員との対話の中で言葉を育てていく方が、みんなで共有できる理念になります。

ランチミーティングや、製造現場での会話の中で、社員の想いも聞いてみてください。「どんな製品を作っている時が嬉しい?」「お客さまからの感謝の言葉で、印象に残っているものは?」。こうした問いかけから始められます。職人気質の現場からは、意外な価値観が出てくるかもしれません。

大切なのは、一方的に伝えるのではなく、一緒に考える姿勢です。社員の言葉をメモしておいて、それを理念に反映させる。すると、押しつけられた理念ではなく、自分たちで作った理念になるんですね。エンゲージメントも自然と高まっていきます。

完璧を目指さない、育てていく姿勢が大切

最初から完璧な理念を作ろうとすると、かえって動けなくなってしまいます。

まずは仮の言葉でもいいから書いてみる。そして、朝礼で語りかけたり、採用面接で伝えたりしながら、使いながら少しずつ磨いていく。「この表現だと伝わりにくいな」「この部分はもっと具体的にしたい」。そんな気づきが出てきたら、修正すればいいんです。

理念は一度決めたら変えてはいけないものではありません。会社の成長や、社会の変化に合わせて進化させていくもの。経営理念として明文化することも大切ですが、それ以上に、日々の意思決定や行動の基準として活用し続けることが意味を持ちます。育てていく姿勢を大切にしましょう。

理念が育っていくプロセス 完璧を目指さず、使いながら磨いていく
1 想いを
書き出す
2 社員と
対話
3 仮の理念を
作る
4 使いながら
磨く
5 共有する

繰り返し磨き続ける

理念は一度決めたら終わりではない 会社の成長や社会の変化に合わせて進化させていくもの

製造業ならではの強みを言葉にする工夫

技術力がある製造業だからこそ、その奥にある想いを言葉にすることが大切です。

「精密加工の技術」だけでなく、その技術で何を実現したいのか。職人のこだわりは何なのか。お客さまの暮らしにどう役立つのか。そこまで言葉にしてみてください。技術仕様を、お客さまに伝わる言葉に置き換えてみる。たとえば精密な加工技術があるなら、「毎日使うものだから、手に馴染む心地よさを追求しています」という温かい表現に変えてみるんです。

BtoCに挑戦する時、この「翻訳」が大きな価値を生みます。技術仕様だけでは伝わらない、ものづくりへの誇りや情熱。それを理念として言語化することで、ブランドイメージが形作られていきます。製品だけでなく、作り手の想いも一緒に届けられる。それが製造業がBtoCで成功する鍵の一つになるんですね。

理念を社内に浸透させる、無理なく続けられる工夫

できあがった企業理念を、どうやって社内に広めていけばいいんだろう。そんなふうに悩まれる経営者の方は少なくありません。

大企業のような立派な制度は必要ないんです。小さな会社だからこそできる、顔が見える距離感での浸透方法があります。ここでは、日常の業務の中で無理なく続けられる工夫を、一緒に見ていきましょう。

朝礼での語りかけから始めてみる

毎朝の朝礼で、今日の仕事が理念とどうつながっているか、一言話してみませんか。

「今日作るこの部品が、お客様の暮らしをこんな風に豊かにするんです」。そんな具体的な語りかけが、社員一人ひとりの仕事の意味を照らしてくれます。完璧な言葉じゃなくていい。あなたの想いを、自分の言葉で伝えることが大切なんです。

続けていくうちに、社員の方からも「こういうことですよね」と声が上がるようになります。

製品開発や顧客対応の場面で理念を確認する

新製品を開発する時や、お客様からの問い合わせに対応する時。「自分たちの理念に照らして、どうだろう」と確認する習慣を持ってみましょう。

理念が実務の判断基準になると、迷った時の道しるべができます。「うちらしさって、こういうことだよね」という共通の価値観が、チームワークを育ててくれるんです。

会議の中で「理念から考えると」と一言添えるだけでも、組織全体の意思決定に一貫性が生まれてきます。

採用面接で自社らしさを伝える機会にする

新しい人を迎える時、理念を通じて「うちはこういう会社です」と伝えられます。

求職者も会社の想いを知った上で入社を決められるので、お互いに納得感が生まれるんですね。ミスマッチも減り、入社後すぐに理念を共有できている状態でスタートできます。

面接は、採用だけでなく自社の存在意義を再確認する場にもなります。応募者との対話の中で、理念が磨かれていくこともあるんです。

大がかりな制度ではなく、日常の中でできること

表彰制度や評価制度を作らなくても、日々の会話や会議の中で理念に触れる機会は作れます。

もちろん、社内に理念を掲示したり、名刺に印刷したりすることも、日常的な対話と組み合わせることで効果を発揮します。目に触れる機会と、語り合う機会。この両方があることで、社員の意識に少しずつ根付いていくんです。

小さな会社だからこそできる、顔が見える距離感での浸透方法を、自分たちのペースで続けていきましょう。無理なく、焦らずに。それが、本当の浸透への近道なんです。

また、理念を社内に掲示したり、名刺に印刷したりするのも有効です。目に触れる機会が増えることで、社員一人ひとりの意識に少しずつ根付いていきます。無理なく、自分たちのペースで。焦らずに続けることが、本当の浸透への近道なんです。

想いを言葉にしてBtoCに挑戦した製造業の実例

「理念なんて、大企業がやることでしょう?」

そう思われる経営者の方も多いかもしれません。でも実は、理念を活かしてBtoCに成功している中小製造業は、意外と身近にあるんです。

ここでは、従業員20名規模の老舗ミシンメーカーが、自分たちの想いを言葉にしてBtoC市場に挑戦した実例をご紹介します。大企業ではなく、同じような規模感の会社の事例だからこそ、「自分たちにもできるかもしれない」という希望を感じていただけるはずです。

老舗ミシンメーカーが「子育てにちょうどいいミシン」で市場を切り拓くまで

創業50年を超えるあるミシンメーカーさんは、長年BtoB中心で事業を続けてこられました。大手アパレルメーカーへの部品供給や、OEM生産が主な事業だったんですね。

従業員は20名ほど。技術力には自信がありましたが、消費者に直接製品を届けたことはありませんでした。転換のきっかけは、社長さんのこんな想いでした。「子どもの入園準備で困っているお母さんたちに、もっと使いやすいミシンを届けたい」。

でも、BtoCへの転換は簡単ではありませんでした。何を強みとして打ち出せばいいのか。どんなメッセージで語りかければいいのか。商品開発の方向性も、デザインも、すべてが手探りだったそうです。そんな中で取り組んだのが、理念づくりでした。

「ミシンで手作りする感動を届けたい」という想いの言語化

理念づくりのワークショップで、社員の方々に「何のためにミシンを作っているのか」と問いかけたそうです。

最初は「良い製品を作るため」「精度を追求するため」といった技術的な答えが多かったとのこと。でも対話を重ねる中で、ある社員さんがこう話されました。「自分も子どもに手作りの巾着袋を作ってあげた時、すごく喜んでくれて。あの感動を、もっと多くの人に届けたいんです」。

その言葉が、チーム全体の心に響きました。自分たちが本当に届けたいのは、ミシンという製品そのものではなく、「手作りする喜び」や「家族との温かい時間」だったんだと気づいたんですね。そこから生まれた理念が、「ミシンで手作りする感動を、すべての家庭に」でした。

この理念があったからこそ、「子育てにちょうどいいミシン」というコンセプトが生まれました。初心者でも迷わず使える設計、子どもが寝た後でも静かに作業できる静音性、レシピ付きで届けるサービス。すべてが、理念から導かれたものだったそうです。

理念があったから決断できた、直販への転換と成長

BtoCへの転換は、大きな決断の連続でした。

ECサイトの立ち上げ、物流体制の構築、カスタマーサポートの整備。従来のBtoBとはまったく違う仕組みが必要でした。社内には不安の声もあったそうです。「本当にやり切れるのか」「失敗したらどうするのか」。

そんな時、支えになったのが理念でした。「私たちは、手作りする感動を届けるためにやるんだ」。迷った時は、その原点に立ち返ることで、チームの結束が深まったといいます。

ECサイトでは、製品スペックだけでなく、「このミシンで作れる入園グッズ」や「お母さんたちの手作りエピソード」を丁寧に発信されました。理念に共感したお客さまからの反応は大きく、発売から1年で想定の2倍の売上を達成。今では、お客さまから届く「子どもが喜んでくれた」という声が、社員の誇りになっているそうです。

理念を起点としたBtoC転換の5ステップ
迷った時は原点に立ち返り、チームの結束を深める
STEP 1
理念づくり
事業の原点となる想いを言語化する
STEP 2
商品コンセプト策定
理念に基づく製品価値を定義する
STEP 3
ECサイト構築
物流・サポート体制を整備する
STEP 4
顧客との対話
製品情報と体験を丁寧に発信する
STEP 5
成長
顧客の声が社員の誇りになる
全ステップを支える理念
「私たちは、手作りする感動を届けるためにやるんだ」
BtoC転換では不安や迷いが生じますが、理念に立ち返ることでチームの結束が深まり、困難を乗り越える力になります。

もし「うちの場合はどうだろう」と思われたら、一緒に考えませんか

この事例を読んで、「自分たちにもできるかもしれない」と感じていただけたでしょうか。

あるいは、「でも、うちの場合はどうすればいいんだろう」と思われたかもしれません。業種も違えば、会社の規模も状況も違います。一人で考えていると、不安になることもあるでしょう。

そんな時は、お気軽にお声がけください。ハコデザインズでは、無料のブランド整理セッションを行っています。まずは2時間、あなたの想いや、今感じているモヤモヤを一緒に整理するところから始めてみませんか。理念づくりも、ブランディングも、一人で抱え込む必要はありません。寄り添いながら、あなたらしい言葉を見つけるお手伝いをさせていただきます。

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